日本の原発、どこを間違えたのか(読書)
2011年 09月 03日
「日本の原発、どこで間違えたのか」(内橋克人著・朝日新聞出版・2011年4月)
「原発への警鐘」(内橋克人著・講談社・1986年9月)の内容を一部収録した復刻版だそうです。
原発の安全神話がどのように作られていったのかの説明から始まります。
第一章は福島原発を危惧する地域住民の訴えに対する自治体・東京電力の対応についてが書かれています。それと原子力発電を建設するため自民党は電源立地推進本部を立ち上げますがそこの副本部長・事務局長が当時の渡辺恒三衆議院議員(現民主党の黄門様?)だったそうです。それで某掲示板で、一部渡辺恒三議員を非難する書き込みがあったのかなと思いました。
第二章は福島原発ができるまでについてです。東京電力に原子力発電課が立ち上がり、海外から情報を集めたり留学して原子力発電を立ち上げていくまでの経緯が書かれています。米国で解明できなかった応力腐食割れという現象を解明して対策を立てるところなど「原発への警鐘」というより、我が国の原発の黎明期とそれを支えた人たちという題名をつけたくなりました。
第三章はマンクーゾ博士の放射線への警告です。原発労働者が他の労働者よりも癌にかかるリスクが高いという説を唱えたのですがその途端に研究費が打ち切りになったり圧力がかかったそうです。同博士の説には反対意見もあるようですが、マンクーゾ博士の説の妥当性について説明がされています。
第四章は公聴会、ヒアリングについてです。住民の不安、疑問に対して原子力安全委員会の不誠実な対応・・・・・。説明は行ったという証拠作りのための会という色彩が強いという感じが私もしました。
第五章は原発のコストの算出の問題点が指摘されています。原子力発電所の建築・廃炉はもちろん放射性廃棄物の処分についてもコストに含まれず、それを含めば原発は割高であること。今でも話題になる総括原価方式という電気料金決定の仕組みの問題点についても述べられています。